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草の根フェスじわじわ人気…一個人が主催、こだわりの人選

「清瀬フォークジャンボリー」で小室等(右から3人目)と共演する城野兼一さん(右から2人目)

 企業ではなく、一個人が主催する草の根的な音楽フェスティバルが人気を呼んでいる。

 小規模ながら、個人の趣味を反映してこだわりのラインアップが実現。意外な大物や実力者も登場している。

 東京・上野恩賜公園の野外ステージで10日に行われた「第3回 パンダ音楽祭」は、約1200人が会場を埋め尽くした。2年前の初回、約850人から右肩上がりに人気を得ている。主催するのは、会社員のパンダ氏(41)。東京・下北沢でライブハウスを巡るうちに、独自の音楽フェスを模索した。「都心で、お金をかけず半日たっぷり楽しめるものにしたかった」

 会場の野外ステージは、不忍池のほとりにあり、古いが風通しの良い場所。近隣の騒音対策による音量制限を逆手に取り、音響設備が簡単な弾き語りを主体とした。食べ物を持ち込み、ピクニック気分で来てもらえるようにした。

 集客には、ツイッターでの告知が有効だった。通をうならせる人選と2000円という価格(現在は2500円)が好評だった。多くの音楽フェスの入場料は、約1万円。会場によっては旅費もかさみ、出店での食事代も大きい。

 今年は、曽我部恵一、奇妙礼太郎、前野健太、チャラン・ポ・ランタン、栗コーダーカルテットと佐藤良成、ギターパンダの6組が出演。ギターパンダは、ユニークな着ぐるみ姿と心の琴線に触れる歌、その後、着ぐるみを脱ぐシュールな演出で飽きさせない。一人で場を持たせる実力者の選定もカギのようだ。弾き語りの程良い音量は、おしゃべりもできるし、子供が騒いでも気にならない。

 パンダ氏は、「いわば、スキマフェス。格好良くないけど、面白くて気持ちいい」と話す。照明や音響、間をつなぐ大道芸人のほかは、運営は十数人の友人と行う。「友人には打ち上げでしか礼ができないが、赤字は免れている。文化祭のノリ。誰でもできます」

 青森県平内町を会場にする「夏の魔物」は、ロック、プロレス、アイドルなど、ごった煮のフェス。成田大致さん(27)が19歳の時、親の援助を得て始めた。手作りながらも出演者は多彩で「毎年赤字。親が、山を売っているみたいです」というのが冗談に聞こえない。今年は、7月21日開催。BRAHMAN、でんぱ組.inc、水木一郎、蝶野正洋らが登場する。

 東京都清瀬市で今月24日に行われた「第6回 清瀬フォークジャンボリー」は、保育士の城野兼一さん(28)が、街おこしとフォークへの情熱でホールを借り切り、500円の入場料で続けている。アマチュアのイベントだったが、第4回から小室等が3回連続で出演。小室は「変なヤツには付き合うしかない」と苦笑しながらも、採算を度外視した試みに共感を示す。今年500席が満員になった。

 音楽ファンの純粋な気持ちで支えられているのが、草の根の音楽祭の魅力のようだ。(清川仁)

 

                 2014年06月02日 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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